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札幌地方裁判所 昭和61年(ワ)2519号 判決

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ金一三四三万一八六〇円及びこれに対する昭和六〇年九月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、それぞれ金三九三三万二六四六円及びこれに対する昭和六〇年九月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  第1項について仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  原告の主張

一  請求の原因

1  保証債務等の成立

Ⅰ 道央信用金庫

a 訴外道央信用金庫(以下「道央信用金庫」という。)は、昭和五七年七月二三日、訴外協同食品株式会社(以下「協同食品」という。)との間で、債務者を協同食品、債権の範囲を信用金庫取引、手形債権、小切手債権、保証委託取引とする金庫取引約定契約を締結し、協同食品は、同日道央信用金庫から四〇〇〇万円を年五分以上の利息を定めて借り受けた。

b 被告及び訴外古谷製菓株式会社(以下「古谷製菓」という。)は、それぞれ道央信用金庫との間で、前項の取引に基づいて生じた協同食品の道央信用金庫に対する債務について連帯保証する旨の契約を締結した。

c 訴外古谷花子(以下「花子」という。)は、昭和五七年七月二三日、道央信用金庫との間で、協同食品の道央信用金庫に対する前記債務を担保する趣旨で花子所有の別紙物件目録一アないしウ記載の土地について極度額を四〇〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、右各土地について根抵当権設定登記手続(札幌法務局北出張所昭和五七年八月三日受付第二七四六一号・共同担保目録(す)第二一九四号)をした。

Ⅱ 北洋銀行

a 訴外株式会社北洋銀行(株式会社北洋相互銀行が平成元年二月普通銀行に転換し、名称を株式会社北洋銀行と改めたもの。以下「北洋銀行」という。)は、昭和四六年七月三一日、古谷製菓との間で、債務者を古谷製菓、債権の範囲を相互銀行取引による一切の債権、北洋銀行が第三者から取得する手形上小切手上の債権とする相互銀行取引約定契約を締結し、古谷製菓の北洋銀行に対する右契約に基づく債務合計額は、昭和六〇年八月三一日までの間に少なくとも二億五二六八万四一九四円及びこれに対する翌日から年五分以上の割合による遅延損害金となった。

b 被告は、北洋銀行との間で、

ア 昭和五七年八月二五日、前項の取引に基づいて生じた古谷製菓の北洋銀行に対する債務について連帯保証をする旨の契約を締結し、

イ 昭和五八年三月一二日、古谷製菓の北洋銀行に対する前項の債務を担保する趣旨で別紙物件目録一コ及びサ記載の各土地について極度額を一億円とする根抵当権設定契約を締結し、右各土地について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五八年三月一四日受付第五〇八三号・共同担保目録(さ)第四四二一号)をした。

c 花子は、北洋銀行との間で、古谷製菓の北洋銀行に対する前記債務を担保する趣旨で、

ア 昭和五七年一二月二四日、花子所有の別紙物件目録一エ及びオ記載の各土地について極度額を一億円とする根抵当権設定契約を締結し、右各土地について根抵当権設定登記手続(札幌法務局北出張所昭和五七年一二月二八日第五三二二〇号・共同担保目録(す)第六二二四号)をし、

イ 昭和五八年五月一八日花子所有の別紙物件目録一カ及びキ記載の各建物について極度額を一億円とする根抵当権設定契約を締結し、右各建物について根抵当権設定登記手続(札幌法務局北出張所昭和五八年五月一九日受付第一四七四一号・共同担保目録(す)第六二二四号)をした。

d 被告、訴外古谷昌司(以下「昌司」という。)、原告古谷忠昭(以下「原告忠昭」という。)、同古谷勝(以下「原告勝」という。)、同大谷澄子(以下「原告澄子」という。)及び同武井百合子(以下「原告百合子」という。なお、原告忠昭、原告勝、原告澄子、原告百合子四名を以下「原告ら」という。)は、昭和五八年一一月二四日、北洋銀行との間で、古谷製菓の北洋銀行に対する前記債務を担保する趣旨で同人ら所有の別紙物件目録一ク記載の建物について極度額を一億円とする根抵当権設定契約を締結し、右建物について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五八年一二月二日受付第二四二三六号・共同担保目録(さ)第四四二一号)をした。

e 訴外アリソンフルヤセールズ株式会社(以下「アリソンフルヤセールズ」という。)は、昭和五九年一月三〇日、北洋銀行との間で、古谷製菓の北洋銀行に対する前記債務を担保する趣旨でアリソンフルヤセールズ所有の別紙物件目録一ケ記載の建物について極度額を一億円とする根抵当権設定契約を締結し、右建物について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五九年二月四日受付第二一二五号・共同担保目録(さ)第四四二一号)をした。

Ⅲ 北洋ファクター株式会社

a 訴外北洋ファクター株式会社(以下「北洋ファクター」という。)は、昭和五七年八月二三日、古谷製菓との間で、債務者を古谷製菓、債権の範囲をファクタリング取引契約による一切の債権、北洋ファクターが第三者から取得する手形上小切手上の債権とするファクタリング取引契約を締結し、古谷製菓の北洋ファクターに対する右契約に基づく債務合計額は、昭和六〇年八月三一日までの間に少なくとも二億二五五六万五〇九〇円及びこれに対する翌日から年五分以上の割合による遅延損害金となった。

b 被告は、北洋ファクターとの間で、

ア 前項の取引に基づいて生じた古谷製菓の北洋ファクターに対する債務について連帯保証をする旨の契約を締結し、

イ 昭和五八年一〇月一二日、古谷製菓の北洋ファクターに対する前記債務を担保する趣旨で被告所有の別紙物件目録一コ及びサ記載の各土地について極度額を二億円とする根抵当権設定契約を締結し、右各物件について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五八年一〇月二〇日受付第二〇九一六号・共同担保目録(さ)第七〇七八号)をした。

c 花子は、昭和五八年二月九日ころ、北洋ファクターとの間で、古谷製菓の北洋ファクターに対する前記債務を担保する趣旨で花子所有の別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について極度額を二億円とする根抵当権設定契約を締結し、右各土地について根抵当権設定登記手続(札幌法務局北出張所昭和五八年二月一四日受付第四四四六号・共同担保目録(す)第七〇三一号)をした。

d 被告、昌司及び原告らは、昭和五八年一一月二四日ころ、北洋ファクターとの間で、古谷製菓の北洋ファクターに対する前記債務を担保する趣旨で同人ら所有の別紙物件目録一ク記載の建物について極度額を二億円とする根抵当権設定契約を締結し、右建物について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五八年一二月二日受付第二四二三五号・共同担保目録(さ)第七〇七八号)をした。

e アリソンフルヤセールズは、昭和五九年一月三〇日、北洋ファクターとの間で、古谷製菓の北洋ファクターに対する前記債務を担保する趣旨でアリソンフルヤセールズ所有の別紙物件目録一ケ記載の建物について極度額を二億円とする根抵当権設定契約を締結し、右物件について根抵当権設定登記手続(札幌法務局昭和五九年二月四日受付第二一二四号・共同担保目録(さ)第七〇七八号)をした。

Ⅳ 武蔵野銀行

a 訴外武蔵野銀行(以下「武蔵野銀行」という。)は、昭和五九年二月七日訴外アリソンフルヤトレイド株式会社(以下「アリソンフルヤトレイド」という。)との間で、債務者をアリソンフルヤトレイド、債権の範囲を手形貸付、手形割引、当座貸越、支払承諾、外国為替その他一切の取引に関して生じた債権、武蔵野銀行が第三者から取得した手形上小切手上の債権とする銀行取引約定契約を締結し、アリソンフルヤトレイドの武蔵野銀行に対する右契約に基づく債務合計額は、昭和六〇年八月三一日までの間に少なくとも二一七四万八五五六円及びこれに対する翌日から年五分以上の割合による遅延損害金となった。

b 被告は、武蔵野銀行との間で、前項の取引に基づいて生じたアリソンフルヤトレイドの武蔵野銀行に対する債務について連帯保証をする旨の契約を締結した。

c 花子は、武蔵野銀行との間でアリソンフルヤトレイドの武蔵野銀行に対する前記債務を担保する趣旨で花子所有の別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について極度額を五〇〇〇万円とする根抵当権変更契約を締結し、右各土地について根抵当権変更登記手続(札幌法務局北出張所昭和五九年二月一四日受付第四七三二号・共同担保目録(す)第五〇二一号)をした。

Ⅴ 北海道拓殖銀行

a 訴外北海道拓殖銀行(以下「拓殖銀行」という。)は、昭和五一年八月一〇日、協同食品との間で、債務者を協同食品、債権の範囲を銀行取引、手形債権、小切手債権、極度額を三〇〇〇万円とする銀行取引約定契約を締結し、協同食品の拓殖銀行に対する右契約に基づく債務合計額は、昭和六〇年八月三一日までの間に少なくとも二〇五一万五六三四円及びこれに対する翌日から年五分の以上の割合による遅延損害金となった。

b 被告及び古谷製菓は、拓殖銀行との間で、それぞれ前項の取引に基づいて生じた協同食品の拓殖銀行に対する債務について連帯保証をする旨の契約を締結した。

c 訴外古谷幸四郎(以下「幸四郎」という。)は、昭和五二年六月九日ころ、拓殖銀行との間で、協同食品の拓殖銀行に対する前記債務を担保する趣旨で当時幸四郎所有の別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について極度額を三〇〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、右各土地について根抵当権設定登記手続(札幌法務局北出張所昭和五二年七月二六日受付第二六二三一号・共同担保目録(け)第四三八八号)をした。

幸四郎は、昭和五七年四月二九日死亡し、相続人花子が別紙物件目録一アないしウ記載の各土地を相続し、幸四郎の担保提供者の地位を包括承継した。

2  債務弁済

Ⅰ 花子と訴外サッポロビール株式会社(以下「サッポロビール」という。)とは、昭和六〇年八月九日花子の所有する別紙物件目録一アないしウ及び同二アないしク記載の各土地(合計一一筆。以下、右一一筆の土地を総称して「本件売買対象土地」という。)を金八億一五九九万九四七七円で売却する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。

Ⅱ 花子は、本件売買契約の代金決裁前である同月二九日死亡したが、花子の相続人は、原告ら、被告及び昌司(いずれも花子の子供ら)の六名である。

Ⅲ 原告ら、被告及び昌司は、花子の死亡により、本件売買契約の売主の地位及び前記根抵当権を設定した別紙物件目録一アないしウ記載の各土地の所有権を各六分の一ずつ共同相続してその物上保証人としての地位を承継したところ、同年八月三一日、サッポロビールから本件売買契約の売買代金の支払いを受け、同日、右売買代金から、主債務者古谷製菓らに代わって物上保証人の地位に基づいて、次のとおり各債権者に対し、合計金額五億六〇五一万三四七四円(各人の弁済額はその六分の一)を弁済した(以下、後記aないしe項記載の各弁済を総称して「本件各弁済」という。)。

a 道央信用金庫(主債務者協同食品)に対し、四〇〇〇万円(各人の弁済額はその六分の一、以下同様)。

b 北洋銀行(主債務者古谷製菓)に対し、二億五二六八万四一九四円。

c 北洋ファクター(主債務者古谷製菓)に対し、二億二五五六万五〇九〇円。

d 武蔵野銀行(主債務者アリソンフルヤトレイド)に対し、二一七四万八五五六円。

e 拓殖銀行(主債務者協同食品)に対し、二〇五一万五六三四円。

3  弁済による代位

Ⅰ 原告ら、被告及び昌司は、本件各弁済により各主債務者に対する求償権を取得し、右求償権の範囲内で、各債権者の原債権及びその連帯保証債権を代位取得し、被告に対し、以下のとおり、右連帯保証債権の給付を請求できる。

a 道央信用金庫に対する弁済により被告に請求できる範囲

ア 古谷製菓は、昭和五九年五月七日第二回目の手形不渡による銀行取引停止処分を受けて倒産し、同月札幌地方裁判所に対し和議開始の申立てをしたが、整理委員の和議を開始すべきではない旨の意見により同年七月二五日右申立てを取り下げ、任意整理に着手し、昭和六〇年一〇月ころ同整理が終了したものであり、古谷製菓には求償債務の責任財産となるべき資産がなく、無資力状態である。

したがって、民法第四四四条を類推適用して古谷製菓の負担部分を残余の保証人らがその負担割合に応じて負担すべきこととなり、連帯保証人たる被告並びに花子の物上保証人の地位を承継した原告ら、被告及び昌司が公平に分担すべきこととなる。

イ したがって、原告らは、道央信用金庫に対する前記弁済により、弁済額の二分の一(頭数は、Ⅰ被告、Ⅱ原告ら、被告及び昌司の二個である。なお、共有物件の担保提供者たる原告ら、被告及び昌司は、求償関係において頭数を六名とみるべきではなく、六名全員で一個の頭数とみるべきである。)である二〇〇〇万円のうち、被告に対し、各自その六分の一である三三三万三三三三円(一円未満は切捨て)を請求できる。

b 北洋銀行に対する弁済により被告に請求できる範囲

ア アリソンフルヤセールズは、古谷製菓の北洋銀行に対する前記債務を担保するために根抵当権を設定した別紙物件目録一ヶ記載の建物を、遅くとも昭和五九年九月一八日までに解体して滅失させたので、物上保証人としての地位を喪失した。

イ 原告勝は、花子が北洋銀行に対して担保提供をしていた別紙物件目録一エないしキ記載の各土地建物を花子の遺言により相続し、花子の物上保証人としての地位を承継した。

ウ 被告は、連帯保証人としての地位と別紙物件目録一コ及びサ記載の各土地の根抵当権設定者としての地位を併せ持つものであるが、求償関係における頭数としては、両地位を併せて一個とみるべきである。

エ したがって、原告ら四名は、北洋銀行に対する前記弁済により、弁済額の三分の一(頭数は、Ⅰ被告、Ⅱ勝、Ⅲ原告ら、被告及び昌司の三個である。)である八四二二万八〇六四円(一円未満は切捨て)のうち、各自その六分の一である一四〇三万八〇一〇円(一円未満は切捨て)を請求できる。

c 北洋ファクターに対する弁済により被告に請求できる範囲

ア アリソンフルヤセールズが別紙物件目録一ヶ記載の建物を解体したことによって物上保証人としての地位を喪失したことは前項ア記載のとおりである。

イ 原告ら、被告及び昌司は、前記のとおり、別紙物件目録一ク記載の建物に北洋ファクターに対する根抵当権を設定し、更に花子の死亡により花子が担保提供していた別紙物件目録一アないしウ記載の各土地を相続し、同人の物上保証人としての地位をも共同承継したものであり、この場合求償関係における頭数は、同一人が複数の担保物件を提供した場合と同視して一個とみるべきである。

ウ 被告は、連帯保証人と物上保証人の地位とを兼ね備えているが、この場合求償関係における頭数を一個とみるべきことは前項ウと同様である。

エ したがって、原告ら四名は、北洋ファクターに対する前記弁済により、弁済額の二分の一(頭数は、Ⅰ被告、Ⅱ原告ら、被告及び昌司の二個である。)である一億一二七八万二五四五円のうち、各自その六分の一である一八七九万七〇九〇円(一円未満は切捨て)を請求できる。

d 武蔵野銀行に対する弁済により被告に請求できる範囲

原告らは、武蔵野銀行に対する前記弁済により、弁済額の二分の一(頭数は、Ⅰ被告、Ⅱ原告ら四名、被告及び昌司の二個である。)である一〇八七万四二七八円のうち、各自その六分の一である一八一万二三七九円を請求できる。

e 拓殖銀行に対する前記弁済により被告に請求できる範囲

ア 古谷製菓が無資力状態であるため、古谷製菓の負担部分を残余の保証人等が負担部分に応じて分担すべきことはaア項記載のとおりである。

イ したがって、原告らは、拓殖銀行に対する前記弁済により、弁済額の二分の一(頭数は、Ⅰ被告、Ⅱ原告ら、被告及び昌司の二個である。)である一〇二五万七八一七円うち、各自その六分の一である一七〇万九六三六円(一円未満は切捨て)を請求できる。

Ⅱ よって、原告らは、被告に対し、各自三九六九万〇四四八円の連帯保証債権を有するところ、内金として三九三三万二六四六円及びこれに対する本件各弁済の日の翌日である昭和六〇年九月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合の遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1(保証債務等の成立)、同2(債務弁済)Ⅰ及びⅡの各事実は認め、同Ⅲのうち原告ら、被告及び昌司が昭和六〇年八月三一日サッポロビールから本件売買契約の売買代金の支払いを受け、同日、右売買代金から各債権者に対し、aないしe項記載の本件各弁済をしたことは認め、その余の事実は否認する。

2  同3のうち、Ⅰaア、同eアの事実中、古谷製菓が無資力であることは認め、その余の事実及び主張は否認又は争う。

三  抗弁

1  花子による事前放棄

Ⅰ 花子は、昭和五九年一〇月一五日ころ、明示的又は黙示的に、花子が本件各弁済をした場合に代位取得する被告に対する連帯保証債権を予め放棄した。

Ⅱ 即ち、本件売買対象土地は、古谷製菓の工場敷地であり、登記簿上の所有名義は花子名義になっていたものの、その実質は古谷製菓の所有ともいうべきものであったため、花子は、古谷製菓の必要とする場合には、いつでも右土地を古谷製菓に贈与する意思をもっていたところ、昭和五九年五月古谷製菓が手形の不渡を出したために右土地を売却して債権者に対する弁済資金にあてることを承諾したものであって、同年一〇月一五日幸四郎に対し、右土地を古谷製菓の債務弁済のために無条件で提供することを承諾したものであるから、この場合の無条件でとは、花子が代位取得する被告に対する連帯保証債権の放棄を含む趣旨である。

2  遺産分割協議の未了による請求権の不成立

Ⅰ 花子は、昭和六〇年四月三〇日、公正証書による遺言状を作成したが、右遺言状は、花子の真意に基づくものではなく、原告勝と村上重俊弁護士(以下「村上弁護士」という。)とが共謀して花子の財産を独占しようと企て、花子をして是非弁別不能の状態に陥れ、又は是非弁別不能の状態に乗じて作成したものであるから、暴利行為に相当し、または公序良俗に反し、無効である。

Ⅱ 被告と昌司とは、昭和六二年六月二七日、札幌家庭裁判所に遺言無効確認の調停の申立てをしたものであるが、遺言が無効であれば、遺産分割協議又は分割審判を経る必要があるところ、その何れも未了であるから、現段階においては本件売買対象土地及び右売却代金を相続人の誰がどれほど相続するかが未確定であるから、相続人の誰がいくら代位弁済したことになるかも未確定であり、被告に対する連帯保証債権を誰がどれだけ代位取得したかも未確定である。

四  抗弁に対する認否

抗弁1、2の各事実は、いずれも否認する。

第三  証拠

証拠関係については、本件記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因1(保証債務等の成立)、同2(債務弁済)Ⅰ及びⅡの各事実、同Ⅲの事実中、原告ら、被告及び昌司が昭和六〇年八月三一日、サッポロビールから本件売買契約の売買代金の支払いを受け、同日、Ⅰ道央信用金庫に対し、債務者協同食品に代わって金四〇〇〇万円を、Ⅱ北洋銀行に対し、債務者古谷製菓に代わって金二億五二六八万四一九四円を、Ⅲ北洋ファクターに対し、債務者古谷製菓に代わって金二億二五五六万五〇九〇円を、Ⅳ武蔵野銀行に対し、債務者アリソンフルヤトレイドに代わって金二一七四万八五五六円を、Ⅴ拓殖銀行に対し、債務者協同食品に代わって二〇五一万五六三四円をそれぞれ弁済したこと、同3Ⅰaア、同eアの各事実中、古谷製菓が無資力であることは、いずれも当事者間に争いがない。

二  前記争いのない事実と〈証拠略〉を総合すると、以下の事実を認めることができ、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。

1  古谷製菓は、明治三二年に開設された雑貨卸商店を前身として大正一二年に設立された菓子製造販売を主たる目的とする株式会社であり、原告らの古谷一族が経営する同族会社であった。

原告らと被告は、父を幸四郎(昭和五八年四月二九日死亡)、母を花子(昭和六〇年八月二九日死亡)とする兄弟であり、被告が長男で、他の兄弟としては次男の昌司がいる。

被告は、父幸四郎が存命中であった昭和四六年に同人の跡を継いで古谷製菓の代表取締役に就任して経営にあたり、昌司は専務取締役の地位にあったが、昭和五八年ころから古谷製菓の経営状態の悪化が顕著となった。原告及び花子は、既に個人財産を古谷製菓の債務の担保として提供するなどして同社の経営に協力してきたが、被告は、原告ら及び花子に対してさらに不動産や株式などの個人財産の担保提供の追加を要求し、他方花子及び原告らは、被告が経営の好転という実績もあげないまま際限なく個人財産の提供を要求するので、被告の経営手腕に必ずしも全幅の信頼を置いていなかったため、原告ら及び花子と被告との間には古谷製菓の経営に関して意見の相違が生じるようになった。

2  原告勝は、昭和五八年一一月、友人の村上弁護士に対し、古谷製菓の倒産を防ぎ、自分の個人財産を保全するための方策等について相談をしたところ、村上弁護士は、被告の経営能力及びワンマンな意見決定の仕方に問題があると判断し、原告ら、花子及び昌司の賛意を得て被告を古谷製菓の代表取締役の地位から解任し、昌司を後任者として就任させる方針を立てた。原告ら及び昌司は、同月一六日、被告に対し、古谷製菓の代表取締役を辞任することを要求したが、被告がこれに応じなかったため、翌日、被告及び昌司らが話合った結果、被告が引き続き古谷製菓の代表取締役の地位に止まることとなった。その際、花子側の要求により、それまで被告が預かっていた花子の実印と印鑑登録証が花子に返還された。

3  古谷製菓は、昭和五九年四月二八日及び同年五月一日、同社振出の約束手形を資金不足を理由に不渡としたため銀行取引停止処分を受け、同月二日札幌地方裁判所に対し、和議開始の申立てをした。

4  花子及び原告らは、昭和五九年五月中旬ころ、村上弁護士に対し、花子及び原告らの個人財産保全のための一切の行為を委任した。花子は、そのころ、被告から花子所有の工場敷地(古谷製菓札幌工場の敷地のこと)等の個人財産を古谷製菓のために提供することを求められたことなどから、村上弁護士の助言に従い、札幌の自宅を離れて東京の原告忠昭宅に身を寄せることにした。

右工場敷地は、もともと幸四郎の所有地であり、その後相続や交換等を経て花子の所有となったものであるところ、幸四郎は、生前、被告及び昌司に対し、古谷製菓の窮状の際には工場敷地を売却して資金化するよう話していたものであり、花子もその旨承知していた。

被告は、その頃、昌司とその妻鐐子(以下「鐐子」という。)に依頼し、原告忠昭宅に花子を訪問して右工場敷地を古谷製菓の債務弁済等のために提供して欲しい旨申し入れ、翌日には、被告と昌司が同じ用件で再度花子を訪ねたが、花子は、いずれのときも村上弁護士と一緒でなければ話し合いに応じられないことを理由に右申入れに応じなかった。このため、被告と被告の代理人である渡辺弁護士は、昭和五九年五月ころから同年六月中旬ころにかけて村上弁護士と面談して右工場敷地の提供を申し入れたが、村上弁護士は、古谷製菓の事業計画案として納得のできるものが提出されなければ個人財産の提供には応じられない旨返答した。

5  原告ら、花子及び被告は、昭和五九年七月四日、村上弁護士、渡辺弁護士及び訴外宮木一夫(以下「宮木」という。)同席のうえ、札幌で親族会議を開き、被告が古谷製菓、株式会社フルヤサービス(以下「フルヤサービス」という。)及びアリソンフルヤセールズの代表取締役を辞任し、古谷製菓の代表取締役に宮木が就任し、フルヤサービス及びアリソンフルヤセールズの代表取締役に原告勝が就任する方針を決め、後日、各会社において右のとおり各代表取締役の交代手続がされた。

6  古谷製菓は、昭和五九年七月二五日、それまでに和議の整理委員から和議不開始の意見書が提出されるなど和議開始決定を得ることが難しい状況となったため、和議開始の申立てを取下げ、任意整理をすることとなった。

7  被告は、同月下旬ころから、古谷製菓の債務弁済のために工場敷地を訴外社団法人樹徳学寮協会(以下「樹徳学寮」という。)へ売却する計画を進めており、花子の代理人である村上弁護士に右売却をすることの承諾を求めたが、村上弁護士は、樹徳学寮は取引相手として信用し難いとして右売却に反対した。

8  原告ら、花子、昌司及び被告は、昭和五九年九月一五日、村上弁護士並びに被告及び昌司の代理人である佐藤弁護士を交えて札幌で親族会議を開催した。被告側は、右席上、被告の古谷製菓代表取締役への復帰及び工場敷地の樹徳学寮への売却の承認の二点を要請したが、村上弁護士は、樹徳学寮への売却には反対した。他方、村上弁護士は、幸四郎が遺した古谷一族の土地のうち特に価値が高く、被告単独所有地や被告、昌司及び原告らの共有地などから成る札幌市中央区南一条〈略〉の一団の土地(以下「南一条の土地」という。)を一族の土地として確保するために、南一条の土地及び地上建物のうち被告及び昌司の全持分と南一条の土地以外の花子所有の不動産の一部(工場敷地は含まれてはいない。)とを交換することを提案し、これに応じられないときは古谷製菓の破産申立をすると述べた。被告及び昌司は、右土地交換について価格に著しい差があり、被告及び昌司に不利益であると判断したため、一旦は右提案に反対したが、結局、一年後に再交換する旨の条件を付してこれに同意することとし、同月一八日、札幌で原告勝、村上弁護士、被告及び佐藤弁護士ら立会いのうえ、村上弁護士及び佐藤弁護士両名が南一条の土地及び地上建物のうち被告及び昌司の全持分と花子所有の土地建物との交換契約を一か月以内に締結する旨の覚書を作成し(以下、被告及び昌司所有の南一条の土地及び地上建物と花子所有の土地建物との交換を単に「土地交換」といい、右覚書による土地交換の合意を「土地交換契約」という。)、被告は、同日、宮木と交代して古谷製菓の代表取締役に復職した。

9  花子は、昭和五九年九月三〇日、前記工場敷地について「幸四郎及び勝を除く四名の子供に均等に遺贈する」旨の内容を含む自筆遺言書を作成した。

10  花子は、昭和五九年一〇月四日、胃癌のために胃の切除手術を受けたが、その容体は、同月一六日ころには他者と会話ができる程度に回復してきていた。被告は、土地交換契約を一旦締結したものの、右契約が花子の真意に基づくものであるかどうかを疑うとともに、右契約が土地価格の不均衡から被告及び昌司に著しく不利益であると判断し、その本契約を締結する意思をなくし、また右工場敷地の売却がいつまでも実現しないことを憂慮していた。そこで、被告は、前同日ころ、入院中の花子を見舞いに病院を訪れた際、予め「私古谷花子は(地番省略)他の古谷製菓株式会社及び札幌工場使用の私の所有地を古谷製菓株式会社債務弁済のため全面的に提供いたします。なおそのために長男幸四郎所有不動産及び次男昌司所有不動産と私の所有地との交換をする意志はございません。(以下、土地交換契約の対象物件の記載あり。省略。)」と記載された書面を持参し、花子に対し、右書面の内容を説明したうえ、これに署名するよう求めたところ、花子は、付添いとして病室にいた鐐子に「債務弁済のため」と「全面的に」の間に「無条件に」との文言、文末に「土地交換の話について村上弁護士から何ら相談を受けていません。」との文言をそれぞれ挿入記載させたうえ、花子が右書面に署名をした(右経過で作成された文書が乙第一号証である。)。

11  原告勝及び村上弁護士が、昭和五九年一〇月二〇日、被告及び被告代理人佐藤弁護士に対し、土地交換契約の本契約の締結を要求したところ、佐藤弁護士は、土地交換契約が花子の意思に沿うかどうかについて花子に会って確認したい旨要求した。このため、村上弁護士側が花子の意思を確認することとなり、花子は、翌二一日付で佐藤弁護士宛に同年九月一八日付で作成された土地交換に関する覚書の内容は承認している旨の確認書を作成した。

12  古谷製菓は、昭和五九年一二月上旬、工場敷地の樹徳学寮への売却を断念した。

13  村上弁護士は、昭和五九年一二月二四日、被告が土地交換契約の本契約を締結しなかったことなどから、フルヤサービス(代表取締役は原告勝である。)の代理人として札幌地方裁判所に古谷製菓の破産宣告の申立てをし、昭和六〇年二月ころ右破産事件の審尋期日において、被告に対し、右破産事件における破産原因の存否の審理を停止するための条件として、土地交換の本契約の締結を要求した。

被告側は、土地交換の本契約の締結には応じないこととしたが、代わりに工場敷地等の処分について村上弁護士に一任することを承知し、同月二三日、古谷製菓名義で同社所有の工場敷地上の建物及び同社の工場敷地の借地権の売却について村上弁護士に委任する旨の委任状を作成し、その際、右委任については期限を三か月とする旨の口頭の約束がなされた。これによって、古谷製菓の破産原因の存否は一旦停止された。

14  被告は、昭和六〇年四月中旬ころ、村上弁護士への右委任にもかかわらず、自ら工場敷地の売却について不動産業者に仲介を依頼し、同月下旬には工場敷地を坪単価四五万円で不動産会社に売却する話を進めたが、これを知った村上弁護士が工場敷地を坪単価三〇万円で売却する旨の広告を出したため、右売却は不可能となった。

15  村上弁護士は、昭和六〇年四月下旬ころ、花子の存命中に工場敷地を売却できるかどうかを懸念し、花子に対し、工場敷地の相続に関する花子の遺言(昭和五九年九月三〇日作成した自筆遺言状によるもの)の内容を確認したところ、被告と原告勝以外の相続人へ遺贈する旨の遺言であったため、そのままでは当時被告に同調していた昌司の相続分について売却に支障が出ることが予想されたため、花子に遺言状の訂正を助言し、花子は、昭和六〇年四月三〇日、工場敷地を被告及び昌司を除く相続人が相続すること等を内容とする公正証書遺言状を作成した。

16  被告は、昭和六〇年五月二九日、村上弁護士に対し、工場敷地の売却の委任について、当初予定していた委任の期限である三か月が経過したとして、委任を解除する旨の通知書を出し、村上弁護士側は、その当時、工場敷地をサッポロビールへ売却する話が進んでいたことから、被告の右委任解除はこれを妨害するものであると反発して、先に停止していた古谷製菓の破産事件の審理を再開させることとした。

被告は、昭和六〇年七月三日、破産事件の審尋期日において、工場敷地のサッポロビールへの売却及び古谷製菓の債務弁済について村上弁護士に委任することを承諾し、フルヤサービスは古谷製菓の破産申立事件の取下げを約した。

村上弁護士(原告勝及びフルヤサービスの代理人として。)及び大和田弁護士(被告及び古谷製菓の代理人として。)は、工場敷地、借地権及び建物をサッポロビールに代金一五億九九七七万円で売却すること、右売却代金による古谷製菓等の債務弁済、担保権の抹消等の交渉については村上弁護士に委任すること及びフルヤサービスは古谷製菓に対する破産申立事件を取り下げることに合意し、その際、「村上弁護士は被告及び昌司に著しい不利益を与えぬよう配慮する。本覚書に定めなき事項については古谷製菓及び被告外古谷一族の利益に合するように双方紳士的に協議して解決する」旨の覚書(乙第二〇号証)を作成した。

17  花子及び古谷製菓は、昭和六〇年八月九日、サッポロビールとの間で、同社に対し、工場敷地及び地上建物(抵当権等の負担を取り除いたもの。)を一五億九六一五万三〇〇〇円(工場敷地の面積が実測の結果約一二坪減少したため、当初予定の代金額が減額となったもの。右代金のうち、花子所有の工場敷地の価格は地上建物についての古谷製菓の借地権を考慮のうえ八億一五九九万九四七七円と定められた。)で売却し、不動産の所有権移転時期を売買代金支払い時とする旨の契約を締結した。

18  古谷製菓の代理人大和田弁護士と花子の代理人村上弁護士とは、本件売買契約の売買代金による債務弁済計画について合意をなし、古谷製菓は右合意に基づき昭和六〇年八月八日付債務弁済計画書を作成したうえ、同月二八日古谷製菓の債権者集会を開催して各債権者から右弁済計画に対する同意を得た。花子の相続人である原告ら、被告及び昌司は、本件売買契約及び売買代金による債務弁済計画の存在を知り、かつこれに異議を唱えていなかった。

19  花子は、昭和六〇年八月二九日死亡した。そこで、村上弁護士は相続人らの代理人として花子死亡による相続関係を法律行為の名義等に反映させることなく、同月三一日、拓殖銀行本店において、花子名義でサッポロビールからの売買代金の支払を受けると同時に各債権者に対し、債権者集会の決定のとおり花子名義で各弁済をした。

三  右認定の事実によれば、請求の原因2Ⅲ記載の事実のうち、原告ら、被告及び昌司が、花子の死亡により本件売買契約の売主の地位及び別紙物件目録一アないしウ記載の各土地の所有権を各六分の一ずつ相続し、同時に右各土地についての花子の物上保証人としての地位を承継したことが認められる。

1  花子の本件売買契約に基づく売主の地位の相続について検討するに、前期認定の事実によれば、花子は本件売買契約締結後その履行前に死亡したものであるから、花子の本件売買契約に基づく売主の地位は相続人に承継されるところ、右地位の相続については特段の遺言がなかったことが認められるので、右売主の地位を相続人六名が共同相続したものと認められる。

2  別紙物件目録一アないしウ記載の各土地の相続関係について検討するに、花子は、前記認定のとおり、別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について、昭和五九年九月三〇日の自筆遺言状では原告勝及び被告を除く相続人に遺贈する旨の遺言をしながら、昭和六〇年四月三〇日、右各土地について原告ら(被告及び昌司を除く相続人)に遺贈する旨の公正証書による遺言状を作成して、前記自筆遺言状による遺言を撤回し、更に、同年八月九日、右各土地を含む工場敷地をサッポロビールへ売却する旨の本件売買契約を締結して、別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について第三者に処分する意思を明らかにし、従前作成した公正証書による遺言状による遺贈と抵触する法律行為をしたものであるから、本件売買契約の締結によって、前記公正証書による遺言も撤回したものとみなされることとなる。したがって、右各土地に対する特段の遺言はないこととなるから、その相続については遺産分割協議又は協議に代わる審判(以下、両者を「遺産分割協議等」という。)を経る必要があり、遺産分割協議等を経るまでは法定相続分に従って共同相続をするものと解される。したがって、花子の子供らである相続人六名は、各六分の一ずつ右各土地を共同相続したものというべきである。そして、右各土地を各相続人の持分六分の一の共有とする遺産分割協議ができたと解すべきことは後記五において説示するとおりである。よって、右各土地についての花子の物上保証人としての地位も右各土地の所有権の相続による承継に伴い、右相続人らが承継したものと認められる。

3  そうすると、原告ら、昌司及び被告は、それぞれ、請求の原因2Ⅲaないしe記載の各債権者に対し、物上保証人として、各主債務者に代わって右aないしe記載の金額の各六分の一に相当する金額を弁済したことにより、各主債務者に対して求償権を取得するとともに、その求償権の範囲内で民法第五〇一条の規定にしたがって各債権者の有する権利を代位取得すべきことになる。

四  そこで、花子が、将来代位取得すべき被告に対する右連帯保証債権を予め放棄していたかどうか(抗弁1)について判断する。

1  前記認定の事実によれば、花子が被告に対する連帯保証債権を事前放棄していたことを推認させるかのような以下のような事実あるいは経験則が存在する。

Ⅰ  花子は、昭和五九年一〇月一六日ころ、工場敷地は古谷製菓の債務弁済のために無条件に提供する旨の文書(以下「乙第一号証」という。)を作成したこと。

Ⅱ  花子の代理人であった村上弁護士は、昭和六〇年七月一一日、被告及び古谷製菓から工場敷地の売却に伴う古谷製菓の債務弁済、担保権の抹消等の事務処理の委任を受けるにあたり、被告及び古谷製菓との間で、「村上弁護士は被告及び昌司に著しい不利益を与えぬよう配慮する。本覚書に定めなき事項については、古谷製菓及び被告外古谷一族の利益に合するように双方紳士的に協議して解決する。」旨の覚書(以下「乙第二〇号証」という。)を作成したこと。

Ⅲ  工場敷地はもともと幸四郎の所有地であり、その後花子の所有となったものであるが、幸四郎は生前、被告及び昌司に対し、古谷製菓が窮状に陥った場合には工場敷地を売却して資金化するよう話しており、花子もその旨承知していたこと。

Ⅳ  古谷製菓は古谷一族の同族会社であり、花子は被告の実の母親であるから、花子が古谷製菓のために弁済をして債権者の被告に対する保証債権を代位取得した場合でも、母親は息子に対して右のような債権を行使する意思を持たないのが通常であること。

2  しかしながら、前項記載の各事実等によっても、花子が生前に将来に代位取得すべき被告に対する連帯保証債権を予め放棄していたものと認めることはできない。

Ⅰ  乙第一号証について検討するに、前記認定の事実によれば、花子は、乙第一号証に署名するに際し、その意味内容を了解していたものと推認される。しかし、乙第一号証の記載内容は将来取得すべき被告に対する連帯保証債権の放棄に直接関するものではなく、工場敷地を古谷製菓の債務弁済の目的で売却するについては土地交換契約の実行を条件にしないということを記載したにすぎないものと解されるから、乙第一号証から右債権放棄の事実を推認することはできない。

即ち、乙第一号証作成の経過をみるに、前記認定の事実によれば、被告は、昭和五九年五月に古谷製菓が同社振出の約束手形について二度目の不渡を出し銀行取引停止処分を受けた後、花子及び村上弁護士に対して工場敷地を古谷製菓の債務弁済のために提供するよう再三申し込みこれを断られていたが、その一方で、同年七月ころから工場敷地の売却について具体的に樹徳学寮との間で話を進めていたため、右売却に対する花子の承諾を取りつけることが急務となっていたところ、村上弁護士側から土地交換の申出とこれに応じない場合の古谷製菓に対する破産申立ての予告とがあり、同年九月中旬ころ、村上弁護士と佐藤弁護士との間で、一か月以内に土地交換契約を締結する旨の覚書が作成され、被告は、一旦は佐藤弁護士の説得により土地交換に応ずることを了承したものの、交換の対象たる土地の価格が不均衡で被告らに不利益であると判断したこともあって、土地交換が花子の真意に基づくものであるかどうかを疑い、また、工場敷地の売却がいつまでも実現しないことを憂慮し、土地交換契約の履行期限が二、三日後に迫っていた時期である同年一〇月一六日ころ、花子に対し、工場敷地を古谷製菓の債務弁済に提供する意思のあること及びその際に土地交換を条件とする意思がないことの確認を取り付けようとして、その旨の花子の念書の作成を企図し、予め念書の文面を作成のうえこれに花子の署名を求めたが、その際、更に念を入れる意味で「無条件に」と挿入させたものであるから、右経過に鑑みれば、乙第一号証の「無条件に」とは、「工場敷地の提供について、村上弁護士側が条件とした土地交換等を条件とはしない」という趣旨と解され、それ以上に工場敷地の提供後、花子が工場敷地の売却資金で古谷製菓の債務等を弁済した場合の求償関係等をどうするかという点については、乙第一号証作成時点において被告自身のみならず花子も全く意識していなったものと推認される。

したがって、乙第一号証から花子が将来取得すべき被告に対する連帯保証債権を放棄したことを推認することはできない。

なお、原告らは、花子は書面の意味内容を全く理解せずに署名をしたにすぎない旨主張するが、前記認定のとおり、花子は、乙第一号証作成時、その約一〇日前に胃の切除手術を受けて体力が衰えていたものの、他者との会話は可能で、花子に署名を求めるについては、被告がその内容を説明して花子を説得したところ花子がこれに応じたものであるから、花子は、署名時に文章の意味内容を理解したうえで被告の要請に従ったものと推認される。証人古谷鐐子の証言中、右認定に反する部分は採用できない。

Ⅱ  乙第二〇号証について検討するに、前記認定の事実によれば、乙第二〇号証は、村上弁護士が原告勝及びフルヤサービスの代理人として古谷製菓及び被告との間で取り交わした覚書であるから、花子の意思は本書面に直接的には表現されていないこととなり、また、原告勝及びフルヤサービスは、当時花子が古谷製菓等の債務を弁済した場合に代位取得すべき連帯保証債権を処分し得る地位にはなかったのであるから、被告及び古谷製菓が原告勝及びフルヤサービスとの間で工場敷地等売却に伴う古谷製菓の債務弁済、担保権の抹消等の処理を村上弁護士に委任するにあたって、右処理について、被告及び昌司に著しい不利益を与えぬよう配慮し、特段の定めのない事項は古谷製菓、被告及び古谷一族の利益に合致するように協議する旨の合意を取り付けたからといって、このことは花子の権利行使とは無縁のことであるから、乙第二〇号証から花子の被告に対する連帯保証債権の放棄を推認することはできない。

さらに、当時村上弁護士は花子の代理人でもあったことから、仮に乙第二〇号証を花子と被告との間の合意でもあると解する余地があるとしても、物上保証人たる花子が古谷製菓等の債務の弁済をすることにより、債権者の被告に対する連帯保証債権を代位取得するという法律効果が発生することは、特に花子側が何らかの法律行為をなすことを要件とするするものではなく、法律上当然のことであるから、花子の右代位取得が乙第二〇号証所定の「不利益」に該当する余地はないものと解される。したがって、この観点から考えても、乙第二〇号証から花子に被告に対する連帯保証債権の放棄を推認することはできない。

Ⅲ  前記1Ⅲ、Ⅳ記載の事情等について検討するに、前記認定の事実によれば、工場敷地は、もともと幸四郎の所有にかかるものであり、幸四郎は、生前被告らに対し、古谷製菓が窮状に陥った場合には、工場敷地を売却して資金化するよう話していたものであり、工場敷地が古谷製菓の窮状の際にはその資金源とされるべき性質のものであることについて、古谷一族の間にある程度共通の認識が会ったものと推認することができ、花子が工場敷地の売却代金を古谷製菓等の債務の弁済に充てたとしても、工場敷地の前記の性質や古谷製菓が同族会社であることを考えると、花子は古谷一族のために当然の行為をしたにすぎないと評価することもでき、また、花子は被告の実の母親であるから、法律上花子に弁済により代位取得した被告に対する保証債務の履行請求権が発生する場合でも、通常、母親は息子に対して右請求権を行使する意思を有しないと解するのが経験則上合理的であると一応いい得る。しかしながら、他方、前記認定のとおり、被告は、幸四郎の死亡後、工場敷地以外の不動産や株式等の花子の個人財産を古谷製菓のために提供することを再三にわたり際限なく要求し、他方、花子は、被告の古谷製菓の経営手腕に必ずしも全幅の信頼を置いていなかったため、古谷製菓の経営方針について意見の相違が生じ、花子が被告に対する代表取締役退陣要求に加わったり、古谷製菓からの財産提供要求に対して個人財産を保全するための一切の行為を村上弁護士に委任するようになったり、被告が保管していた花子の実印と印鑑登録証を返還して貰うようになるなど、花子と被告との間には、一族としてのあるいは通常の母子関係におけるような連帯感が薄れていたものと解されるから、前記1Ⅲ、Ⅳの事情から花子が将来代位取得すべき被告に対する連帯保証債権を放棄したことを推認することはできない。

3  前記認定の各事実等いずれによってもそれのみから花子の被告に対する連帯保証債権の放棄を認めることができないことは以上説示したとおりであるが、さらに各事実を総合して勘案しても右放棄を認めることはできないというべきである。他に右放棄の事実を認めるに足りる証拠もない。

したがって、抗弁1は理由がない。

五  抗弁2について判断する。

被告は、花子が昭和六〇年四月三〇日にした公正証書による遺言は無効であるから、遺産分割協議等が未了の現段階においては、本件売買対象土地及び売却代金を誰がどれだけ相続するか未確定であり、本件各弁済によっても原告らが被告に対する連帯保証債権を取得したか未確定である旨主張するが、右主張は失当であるといわざるを得ない。

1  被告は、花子の公正証書による遺言が無効であるから、本件売買対象土地及びその売却代金の相続は遺産分割協議等によらざるを得ない旨主張する。しかし、第三項で判示のとおり、本件売買対象土地は、右公正証書遺言の内容の一部を成していたが、本件売買契約は、本件売買対象土地に関する右遺言後の生前処分であるから、右遺言が有効な場合でも、本件売買対象土地については遺言の撤回があったことになる。そうすると、右遺言の有効無効にかかわらず本件売買対象土地の相続関係は遺産分割協議等によることとなる。

2  被告は、本件売買対象土地及びその売却代金に関する遺産分割協議等が未了であるから、被告に対する連帯保証債権も未確定である旨主張するので、その当否について判断する。

本件売買対象土地の相続は、前示のとおり、相続開始後遺産分割までの間は相続人の法定相続分に応じた共有に属するところ、このような共有の遺産を共同相続人全員の意思によって処分することは勿論可能であり、右処分が遺産分割の前提としてなされた場合には、その対価が更に遺産分割の対象となるが、右処分が特に相続人の当面の必要等に応じて行われ、その対価が必要な用途に費消される場合、その処分は、共同相続人間の協議によって行われた遺産の一部分割と解すべきこととなる。

本件では、前記認定事実のとおり、本件売買対象土地のサッポロビールへの所有権移転自体は、花子が生前にした本件売買契約について、相続人らが花子の右の売主の地位を相続した結果、本件売買契約上の義務の履行としてなされたものであり、右売却代金の費消用途については、花子の生前から、花子及び相続人全員の合意のもとで、相続人の利害に係わる古谷製菓及びその関連会社等の債務弁済に充てたものであるから、本件売買対象土地及び本件売買契約上の売主の地位については共同相続人の協議により遺産の一部分割(土地は持分各六分の一の共有、売主の地位に基づく代金債権は六分の一ずつ分割)が行われたものと解される。

したがって、本件では、本件各弁済によって主債務者に対して生ずる求償権及び右求償権の範囲内で原債権を代位行使し得る結果として取得する被告に対する連帯保証債権等は、各相続人が確定的に取得したものと解すべきであるから、被告の右主張(抗弁2)は理由がない。

六  以上によれば、原告らは、被告及び昌司と共に本件各弁済をしたことによって、本件各債務の連帯保証人である被告に対し、原債権を代位行使して保証債務の履行を請求し得ることとなる。

1  道央信用金庫に対する弁済に関する代位の範囲について

Ⅰ  道央信用金庫に対する弁済に関しては、前示のとおり、協同食品の道央信用金庫に対する主債務を被告及び古谷製菓がそれぞれ連帯保証し、花子が、別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について根抵当権を設定していたこと、古谷製菓が無資力であることは、当事者間に争いがない。右各土地について相続人間で原告ら、被告及び昌司が各持分六分の一の共有とする旨の遺産分割協議が成立したと解すべきことは前に説示したとおりである。

Ⅱ  したがって、道央信用金庫に対する弁済に関し民法第五〇一条但書五号の頭数は、原告ら、被告、昌司、及び古谷製菓の七個となるので、原告らは、それぞれ、被告に対し、道央信用金庫に対する各人の弁済額である六六六万六六六六円(一円未満は切捨て)の七分の一である九五万二三八〇円(一円未満は切捨て)について保証債務の履行を請求できることとなる。

Ⅲ  原告らは、古谷製菓は無資力であるから、民法第四四四条を類推適用して古谷製菓の負担部分を残余の保証人等が負担部分に応じて分担すべきであると主張する。

弁済による代位の制度は、代位弁済者の債務者に対する求償権を確保することを目的として債務者に対する求償権を有する限度で代位弁済者に原債権及びその担保権等を行使することを認めるものである。そして、保証人及び物上保証人が存在する場合の代位の割合の決定基準は、民法第五〇一条但書五号に定められているところであり、右条項は、連帯保証人が無資力であるか否かにかかわらず、右条項にいう「頭数」に算入すべきことを定めているものと解される。他方、民法第四四四条は、弁済による代位の制度や債務者に対する求償権について定めたものではなく、複数の連帯保証人がいる場合の他の連帯保証人に対する求償権の範囲を求める際などに適用ないし準用される規定であって、求償権の確保を図る代位制度とはその趣旨を異にするので、代位の割合を決定するについて、民法第四四四条を類推適用すべきでないと解されるから、原告の右主張は理由がない。

Ⅳ  また、原告らは、共有者六名を一個の頭数として計算すべきであると主張するが、各共有者がそれぞれ民法第五〇一条但書五号の「自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者」に該当すること及び同号の「頭数」は共有者一名について一個として計算すべきことは、同号の規定自体から明らかであるから、原告の右主張は民法第五〇一条但書五号の明文に反するものであり、理由がない。

2  北洋銀行に対する弁済に関する代位の範囲について

Ⅰ  北洋銀行に対する弁済に関しては、前示のとおり、古谷製菓の北洋銀行に対する主債務を被告が、連帯保証し、かつ別紙物件目録一コ及びサ記載の各土地に根抵当権を設定し、花子が別紙物件目録一エないしキ記載の各土地建物に根抵当権を設定し、原告ら、被告及び昌司が別紙物件目録一ク記載の建物に根抵当権を設定し、アリソンフルヤセールズが別紙物件目録一ケ記載の建物に根抵当権を設定したものであることは当事者間に争いがない。

Ⅱ  アリソンフルヤセールズが別紙物件目録一ケ記載の建物を滅失させて物上保証人としての地位を喪失したか(請求の原因3Ⅰb〈1〉)どうかについて検討する。

成立に争いのない〈証拠略〉によれば、アリソンフルヤセールズは、別紙物件目録一ケ記載の建物を昭和五八年ころパチンコ店の店舗として新築したこと、右新築建物は西壁外壁を隣接の長崎屋高桑ビルの外壁をもって代えていたこと、昭和五九年九月ころ右建物の用途を駐車場に変更するにあたり、東側外壁の南半分及び南側の外壁の大部分を取壊し、また西側の外壁のうち内装壁を除去するなどの解体をして滅失登記の申請をしたが受理されなかったこと、昭和六〇年七月ころ、右建物がフルヤサービスに譲渡され真正な登記名義の回復を登記原因として右建物の所有権移転登記がなされたこと、フルヤサービスが昭和六一年四月一九日ころ更に右建物の東側外壁のうち階段と階段との間の外壁などその大部分を取り払うなどの解体をし、再度滅失登記の申請をしたところ、右申請が受理されたことが認められ、右事実によれば、右建物は、昭和五九年の解体によっては北側、西側の外壁の全部及び東側の外壁の半分を残したままで未だ社会通念上滅失したといえる程度には至らず、昭和六一年四月ころ滅失したものと認められ、右滅失によって右建物に設定されていた根抵当権も消滅したと解される。

そうすると、本件弁済時である昭和六〇年八月三一日には、右建物が滅失していたものとは認められないから、代位の範囲を決するための民法第五〇一条但書五号の頭数の計算にフルヤサービスを入れるべきこととなる。なお、物上保証の目的物件について所有権を取得した者は民法第五〇一条の「第三取得者」には該当せず、「自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者」に該当すると解される。

Ⅲ  したがって、北洋銀行に対する弁済に関し民法第五〇一条但書五号の頭数は、原告ら、被告、昌司及びフルヤサービスの七個となるので、原告らは、それぞれ、被告に対し、北洋銀行に対する各人の弁済額である四二一一万四〇三二円(一円未満は切捨て)について、各自その七分の一である六〇一万六二九〇円(一円未満は切捨て)の保証債務の履行を請求できることとなる。

3  北洋ファクターに対する弁済に関する代位の範囲について

Ⅰ  北洋ファクターに対する弁済に関しては、前示のとおり、古谷製菓の北洋ファクターに対する主債務を被告が連帯保証し、かつ別紙物件目録一コ及びサ記載の各土地に根抵当権を設定し、花子が別紙物件目録一アないしウ記載の各土地に根抵当権を設定し、原告ら、被告及び昌司が別紙物件目録一ク記載の建物に根抵当権を設定し、アリソンフルヤセールズが別紙物件目録一ケ記載の建物に根抵当権を設定していたものであることは当事者間に争いがない。

Ⅱ  アリソンフルヤセールズが別紙物件目録一ケ記載の建物に設定した根抵当権について、右建物の譲受人であるフルヤサービスが代位の頭数の計算に入ることは前説示のとおりである。

Ⅲ  したがって、北洋ファクターに対する弁済に関し民法第五〇一条但書五号の頭数は、原告ら、被告、昌司及びフルヤサービスの七個となるので、原告らは、それぞれ、被告に対し、北洋ファクターに対する各人の弁済額である三七五九万四一八一円(一円未満は切捨て)の七分の一である五三七万〇五九七円(一円未満は切捨て)について保証債務の履行を請求できることとなる。

4  武蔵野銀行に対する弁済に関する代位の範囲について

Ⅰ  武蔵野銀行に対する弁済に関しては、前示のとおり、アリソンフルヤトレイドの武蔵野銀行に対する主債務を被告が連帯保証し、花子が別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について根抵当権を設定していたことについて当事者間に争いがない。

Ⅱ  したがって、道央信用金庫に対する弁済に関し民法第五〇一条但書五号の頭数は、原告ら、被告、昌司の六個となるので、原告らは、それぞれ、被告に対し、武蔵野銀行に対する各人の弁済額である三六二万四七五九円(一円未満は切捨て)の六分の一である六〇万四一二六円(一円未満は切捨て)について保証債務の履行を請求できることとなる。

5  拓殖銀行に対する弁済に関する代位の範囲について

Ⅰ  拓殖銀行に対する弁済に関しては、協同食品の拓殖銀行に対する主債務を被告及び古谷製菓が連帯保証し、花子が別紙物件目録一アないしウ記載の各土地について根抵当権を設定していたこと、古谷製菓が無資力であることについて当事者間に争いがない。

Ⅱ  したがって、拓殖銀行に対する弁済に関し民法第五〇一条但書五号の頭数は、原告ら、被告、昌司及び古谷製菓の七個となるので、原告らは、それぞれ、被告に対し、拓殖銀行に対する各人の弁済額である三四一万九二七二円(一円未満は切捨て)の七分の一である四八万八四六七円(一円未満は切捨て)の保証債務の履行を請求できることとなる。

6  以上によれば、原告らは、被告に対し、各自ⅠないしⅤ記載の合計額である一三四三万一八六〇円の保証債務の履行請求権を有することになる。したがって、被告は、右一三四三万一八六〇円及びこれに対する本件各弁済の日の翌日である昭和六〇年九月一日から支払済みまで年五分の割合の遅延損害金の支払い義務があることとなる。

七  以上の次第で、原告らの被告に対する請求は、それぞれ一三四三万一八六〇年及びこれに対する昭和六〇年九月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから右の限度で認容することとし、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言については同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

物件目録一

ア 所在 札幌市東区〈略〉

地番 四一〇番

地目 宅地

地積 三二四四・五二平方メートル

イ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三九二番一

地目 宅地

地積 六八八五・五五平方メートル

ウ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三九三番五

地目 宅地

地積 一六四・二六平方メートル

エ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三九五番二六

地目 宅地

地積 七二・八九平方メートル

オ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三九五番二七

地積 宅地

地積 一〇九〇・九〇平方メートル

カ 所在 札幌市東区〈略〉

家屋番号 三九五番二七の一

種類 倉庫

構造 石造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建

床面積 二一三・九五平方メートル

キ 所在 札幌市東区〈略〉

家屋番号 三九五番二七の二

種類 倉庫

構造 石造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建

床面積 一六五・六二平方メートル

ク 所在 札幌市中央区〈略〉

家屋番号 二〇番二の一

種類 店舗

構造 鉄筋コンクリート・鉄骨造三階建

床面積 一階 一〇・四〇平方メートル

二階 二四一・四〇平方メートル

三階 一二二・五〇平方メートル

ケ 一棟の建物の表示

所在 札幌市中央区〈略〉

構造 鉄筋コンクリート・鉄骨造陸屋根四階建

床面積 一階 四〇〇・五四平方メートル

二階 二五九・二〇平方メートル

三階 一二九・六〇平方メートル

四階 一〇三・六三平方メートル

専有部分の表示

家屋番号 南一条〈略〉

種類 駐車場

構造 鉄筋コンクリート・鉄骨造一階建

床面積 一階部分 三六七・五四平方メートル

コ 所在 札幌市中央区〈略〉

地番 二〇番一

地目 宅地

地積 九五・六八平方メートル

サ 所在 札幌市中央区〈略〉

地番 二四番

地目 宅地

地積 一三二・二三平方メートル

物件目録二

ア 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八三番地

地目 原野

地積 二二一平方メートル

イ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二〇

地目 宅地

地積 四五・七五平方メートル

ウ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番九

地目 宅地

地積 五二・八九平方メートル

エ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二四

地目 雑種地

地積 一八五平方メートル

オ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二一

地目 宅地

地積 四〇三三・三五平方メートル

カ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二二

地目 雑種地

地積 七三二平方メートル

キ 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二二

地目 宅地

地積 一三五九・三八平方メートル

ク 所在 札幌市東区〈略〉

地番 三八四番二四

地目 雑種地

地積 一八二平方メートル

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